共感できてうれしい
どうやら生まれつき「共感する」という機能がうまく働かないらしい。
誰かの言葉にみんなが笑う。
焦って、急いで私も笑って輪の一員のフリをしていた。
どうしてみんなと同じように笑えないんだろうとずっと悩んでいた。
というのは前置きで、今日はとっても嬉しいことがあった。
今日は少し体力があったので、何年か前に読んだ漫画を読み返した。
その漫画を初めて読んだときは、正直メッセージ性を理解できなかった。
なんだかふわふわとした内容の作品だな、なんて思いながらもなんとなく捨てずに残しておいたのは、きっと当時の自分もどこかで心が動いていたのだろう。
今になって、こんなに強いメッセージを受け取れるなんて思わなかった。
ふわふわなんてしていない。こんなにも登場人物の感情は揺れ動いていたんだ。
幼い自分が大嫌いだけど、こんな感想を持てるようになっていた。
3~4年の間、少しも変われていないなんてことはなかった。
まだまだ同い年と比べると子供のようだけれど。
共感できて、うれしい。
読んだ感想
読んだ作品はymz先生の「ハイ・ファイ・ランデブー」です。
※内容についてやんわりと触れるので、閲覧注意でお願いいたします!
舞台は学校に生徒が2人しかいないくらい田舎。
中学生の2人の少年を中心にした小さな村に住む人々の恋のお話だ。
現在の日々が愛おしいと、未来に漠然とした不安を抱く。
別々の学校に進学して、だんだんと恋人の中の自分が、自分の中の恋人が強制的に流れていく時間によって薄れてしまうことが怖い。
将来、自分のことを忘れてしまうのか。
自分以外の人を好きになるのか。
未来が怖くて仕方がない。
みんなはどうやって愛しい人に「好き」を証明しているのだろうか。
どうやって証明したら、してもらえたら信じられるのか。
中学生の彼らには「言葉」でしか証明できない。
「好きだよ」にしか縋れない。
でもそんな言葉だけじゃ不安で仕方ない。
今の自分はあまりにも子供で、大人達みたいに指輪や家を持ったり、結婚ができない。
言葉なんてふわふわしたものじゃなくて「形」がほしい。
そんな思春期のぐちゃぐちゃとした不安に苦しむ姿に、過去の私や今の私が共感して一緒に苦しくなれた。
思春期の少年がピュアな恋心から生まれる不安に振り回され、静かに泣くシーンは何度読み返しても心打たれた。
恋人を試すこともきっと悩んで苦しんで決めたのだろう。
不安そうな姿をよく見せていたが「俺はきっと、この人のことをずっと好きだ」という気持ちに芯が通っていて格好良かった。
彼らの未来がどうか幸せであってほしいと願わずにはいられない。
「形」に強くこだわりを持つ彼に、「言葉」で証明できると信じる彼は必要だ。
読後も余韻に浸ってしばらくぼんやりしてしまった。
本当に素敵な作品に出会えて幸せです。